食品スーパーに就職し、配属されたのがベーカリー部門で、パン作りは現場で覚えました。入社して9年、これからのことを考えていたときに出会ったのが、あるお店のイ一スドーナツでした。派手さを追求しないシンプルなおいしさに感動しました。「基本中の基本を極めていくと看板商品になる」ということをそのおいしさが教えてくれ、私のお店の原点にもなっています。イーストドーナツの専門店をやりたい。一一開業するため、そして基礎から学ぶために会社を辞め神戸製菓に入学。もし何かの間違いで、ドーナツで成功したらどうしよう…そんなことをなぜか当時の私は思っていました（笑）。在学中から機会があれば地元のイベントに出店していました。見込み客の確保を含めてゼロからではなく、0.1からのスタートにしたかったんです。その頃のお客様は今も来てくださっています。

商品はふわっとして歯切れのいい、パンの作り方を踏襲したイ一ストドーナツと食パンの2アイテムのみです。甘すぎない生地がベ一スなので、具材の組み合わせも自由に楽しめるのが醍醐味です。 商品を大切に扱いたくて、見て選んでいただくスタイルにし、お店自体もショ一ケ一スのイメージにしました。シンプルでありながら目新しく、前例のないことをいつもめざしています。作れる数に限りがあり、お客様の期待に応えきれてないのですが、「自分で作ったものをお客様に提供する」 ことが私には重要なのです。最近では、増産しない代わりに動画でドーナツ作りの技術提供など、ドーナツ屋として挑戦してみようとも考えています。「ありがとう」の言葉は本当に励みになります。まわりの人に応援されるお店であるために、納得できるドーナツを作り続けます。 （2021年10月取材）